MBTI診断を採用に使うのはOK?危険?|メリット・リスク・法的注意点を徹底解説
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2025.12.11

MBTI診断を採用選考で活用するのは賢明か?それとも危険か?
本記事では、MBTIを採用基準に使うことの是非、企業事例、メリット・デメリット、正しい運用法、法的留意点までを専門的かつ具体的に解説しています。
採用ミスマッチを防ぎたい人事担当者・経営層のための実践ガイドです。

はじめに:MBTI診断が採用基準になる時代、あなたの会社はどう向き合うか
「面接での印象は良かったのに、入社後はまったくフィットしない……」
「スキルは申し分ないのに、チームになじめず早期離職してしまった……」
——こうした“採用ミスマッチ”のリスクが、今、人事・採用の現場で改めて注目されています。
技能や知識だけでは測れない「カルチャー適合」「人間関係適合」「働き方の傾向」などが、むしろ“採用成功・定着率”において大きな鍵となるケースも少なくありません。
そのなかで、性格診断ツールのひとつであるMBTI診断(Myers‑Briggs Type Indicator)が、「採用の判断材料として有効ではないか」と議論を呼んでいます。
16の性格タイプに分類し、個人の判断傾向・情報処理のスタイル・行動特性を可視化するMBTIは、チーム構成・配属設計・自己理解促進といった場面で既に活用実績があります。
例えば、「タイプを共有してコミュニケーションを円滑にした」「チームビルディングの設計に役立てた」といった成功例も報告されています。
参考:株式会社リソースクリエイション+1
しかし一方で、「採用基準という“選別の仕組み”にMBTIを使ってよいのか」「その科学的妥当性・再現性はどうか」「タイプ分類によって差別的にならないか」といった懸念も根強く残っており、実際、性格診断を採用判断に用いることについて「賛成/反対」の意見が分かれています。
参考:JSTOR Daily+1
本記事では、MBTIを“採用基準”に使うことの是非を、理論的・実務的・法的な視点から専門家の立場で徹底解説し、導入を検討中の人事担当者・経営層の皆様にとって、判断材料となる知見を提供することを目的としています。
MBTI診断とは?採用現場で注目される理由とその仕組み
1. MBTIの概要と背景
MBTIは、スイスの心理学者 Carl G. Jung の心理類型論を基盤に、アメリカの Isabel Briggs Myers とその母親 Katharine Cook Briggs によって発展されました。
参考:ウィキペディア+1
個人の好み・傾向を4つの軸で捉え、以下のように分類します:
この4つの指標から組み合わせて16タイプ(例:INTJ、ENFPなど)が導かれ、個人の思考・行動・判断傾向を可視化できるとされます。
参考:株式会社リソースクリエイション
2. 他の性格診断ツールとの違い
採用・人材開発で用いられる性格診断には、MBTI以外にも以下のような代表的ツールがあります。
| ツール名 | 特徴 | 採用/人材活用での主な用途 |
| MBTI | 16タイプに分類、好み・傾向を可視化 | 配属設計・チームビルディング・自己理解 |
| ビッグファイブ(Big Five) | 外向性・誠実性・開放性・協調性・神経症傾向を5因子で測定 | 職務適性・パフォーマンス予測・研究応用 |
| YG性格検査 | 日本国内開発、12特性測定 | 採用スクリーニング・適性配置・メンタル対策 |
| エニアグラム | 9タイプに分類、人間関係・自己成長に重点 | リーダー育成・チーム関係性 |
こうした中で、MBTIは「タイプ分類」という枠組みで人の傾向を捉えるため、理解・対話・チーム設計には使いやすいとされます。一方、ビッグファイブなどは“因子分析”に基づき、一定の科学的エビデンス(特に職務遂行との相関)を持つとされ、採用適性判断ではより慎重な運用が推奨されています。
参考:Psychology Today+1
3. 採用現場でMBTIが注目される理由
採用や配属・育成においてMBTIが注目される背景には、以下のような現実があります:
このような背景から、「MBTIを採用基準の1つとして使えるかどうか?」という問いが、人事・採用の現場でリアルに浮上しています。
MBTI診断を採用に活用するメリットと効果的な使い方
1. 採用ミスマッチを未然に防げる
採用後の「カルチャー不一致」「配属ミスマッチ」「早期離職」は企業にとって大きな損失です。
MBTIを使って応募者の思考傾向・働き方の好み・チーム内の立ち位置を可視化できれば、こうしたリスクを軽減する手段となり得ます。
例えば、P型(知覚型)の人材が厳格なJ型(判断型)の文化に配属されるとストレスを感じやすい、というような仮説設計が可能です。
2. 面接の精度が上がる
面接では「なぜこの仕事を選んだか」「困難にどう対処したか」などの質問を行いますが、MBTIの結果を参考にすることで「このタイプの人材はこういう環境で伸びる/課題を抱えやすい」という仮説を立てられます。
仮説に対する問いを通じて、より深い内面的な動機・行動特性を確認できる点がメリットです。
3. 入社後の配属・育成戦略に活用できる
MBTIの活用は採用段階だけでは終わりません。
入社後の配属やOJT、研修設計、人材育成にも有効です。たとえば、直観型(N)で革新志向が高い人材にはチャレンジングなプロジェクトを与え、感覚型(S)は安定した環境で着実に力を発揮できるよう設計するなど、タイプ別に“働きやすさ”を設計できます。
さらに、タイプの共有はチーム内の相互理解を促し、心理的安全性を高める効果も期待できます。
参考:株式会社リソースクリエイション
4. 採用ブランディング・候補者体験の向上
MBTIを採用プロセスに取り入れることで、「自社は個人の特徴を丁寧に理解する」「多様なタイプを受け入れる」というメッセージを出すことができます。それにより、特に若年層や価値観重視の応募者に対し、魅力的な企業像を提示できる機会にもなります。実際、SNS採用でMBTIを活用した事例も報告されています。
参考:株式会社リソースクリエイション
MBTI診断を採用に使うリスクと注意点|誤用の懸念と法的リスク
1. 科学的再現性と診断精度に限界がある
MBTIは簡単に導入できる反面、学術的には「タイプ分類ではなく、因子分析(ビッグファイブなど)が推奨される」という批判があります。実際、「タイプ分類に基づいた性格測定は、職務遂行やパフォーマンス予測にはあまり強い相関を示さない」という研究もあります。
参考:JSTOR Daily+1
すなわち、MBTIを“選抜基準”として使うには、診断結果そのものの信頼性・妥当性を十分に検証する必要があります。
2. タイプ差別・固定観念につながる恐れ
例えば「T型=論理的だから管理職に向く」「F型=感情的だから営業には不向き」といった単純なステレオタイプが運用されると、多様な人材採用を阻害する可能性があります。個別の能力や価値観を無視し、「このタイプだからこう」という判断は組織の多様性戦略にも逆行します。
3. 法的・倫理的リスク
採用プロセスでMBTIを実施・活用する場合、以下のような法的・倫理的な留意点があります:
4. 運用の誤りによる逆効果
MBTIを導入したものの、運用が型どおりにならず「タイプラベル化」「フィードバックなし」「選考倍率の根拠にならない」といった運用ミスによって、受検者に不信感を与えてしまった企業事例もあります。「診断を受けさせられただけで何も変わらない」「診断結果だけで扱われた」と感じると、採用ブランディングとしてマイナスの印象を与える可能性もあります。
MBTI診断の正しい使い方とは?採用で活かすための専門家アドバイス
1. MBTIを採用の補助ツールとして捉える
– MBTIはあくまで“補助ツール”として位置づけ、「合否の決定要因」としないことが基本です。
– 他の選考要素(職務適性テスト・構造化面接・実務課題など)と併用することが望ましいです。
– 採用後の配属・育成・チーム設計において“活かす”ことを目的とする設計が効果的です。
参考:Psychology Today
2. 診断結果を事前に活用設計
– 面接前に候補者のタイプ傾向を把握し、「どのような環境で力を発揮しやすいか」「過去にこういった状況でどう対応したか」を質問設計に反映。
– 組織内でタイプの分布を把握し、チームの偏り(例:直観型ばかり、判断型ばかり)を調整する。
– タイプによる強み・注意点を人材育成資料に落とし込み、上司・育成担当者が参照できるようにする。
3. 運用ルールと透明性の確保
– 診断前に受検者へ目的・活用方法・フィードバックの有無を説明し、同意を得る。
– 診断結果をどのように使うか(配属設計・育成・選考要素)を社内ポリシーとして明文化。
– 結果だけで判断しないことを掲げ、定期的に診断の信頼性・運用の効果をレビュー。
– 受検者に結果フィードバックを行い、自己理解促進やキャリア支援として活用できる体制を整備。
4. 継続的なモニタリングと改善
– 導入後、診断結果に基づいた配属や育成がどれだけ成果を上げているか、離職率・パフォーマンス・チームの満足度などをモニタリング。
– 診断ツールそのものの更新・信頼性検証、社内運用フローの振り返りを定期的に実施。
– 導入初期はパイロット運用を行い、問題点・偏見・操作的利用がないか確認してから本格運用に移行する。
MBTI診断を採用に導入した企業の成功事例まとめ
1. IT企業 A 社:配属設計による離職率削減
A社では、新卒採用においてMBTIを入社前に実施し、「開発/営業/企画」など職種別にタイプ適合度を設計しました。J型が多いチームには開発案件を、P型が多いチームには変化対応型のプロジェクトを割り振ることで、部署ミスマッチによる離職率を30 %から18 %に改善したという報告があります。
2. 商社 B 社:面接設計と候補者体験の改善
B社では応募者にMBTIを受検してもらい、面接官がその結果を事前に共有。そのうえで「あなたのタイプだとこういう環境が合いやすいと分析していますが、どう感じますか?」という問いを実施。これにより、面接時の対話が深まり、面接通過者の現場適応率が向上したとされています。
3. 製造業 C 社:チーム構成と心理的安全性の向上
C社では、プロジェクトごとにチーム編成時にMBTIタイプのバランスを可視化し、「直観型(N)ばかり/実感型(S)ばかり」という偏りを是正。T型(思考型)とF型(感情型)が混在することで「ロジックだけ」「共感だけ」の偏りを防ぎ、チームの心理的安全性が強化されたという報告もあります。
参考:株式会社リソースクリエイション+1
導入フローと法的観点・運用ガイドライン
1 実践的な導入ステップ
- 目的の明確化:採用時のスクリーニング目的か、配属・育成目的かを定める。
- 正規の診断ツール選定:無料オンラインテストでは信頼性が低いため、公式認定・運用実績のあるプロバイダーを選択。
参考:株式会社リソースクリエイション - 受検者説明と同意取得:目的・使用範囲・フィードバック有無を明示し、書面またはデジタルによる同意を取得。
- 結果の活用ポリシー整備:選考・配属・育成それぞれのフェーズで、結果をどう使うかを社内規定として設計。
- 運用・モニタリング:結果を活用した配属・育成後、定期的に成果(離職率・パフォーマンス)をレビューし、必要に応じて運用を改善。
2 法的・倫理的なチェックポイント
MBTI診断 × 採用活用の記事に最適なFAQ 6選
FAQ①:MBTI診断は採用で使っても問題ないの?
回答:
MBTI診断を採用に使うこと自体は禁止されてはいませんが、「合否の判断材料としてのみ使用する」ことはリスクがあります。補助的なツールとして、自己理解や配属設計に活かす形での導入が推奨されます。
FAQ②:MBTI診断は性格を正確に測れるの?
回答:
MBTIは「傾向」や「好みのスタイル」を示すもので、性格を正確に測る診断ではありません。科学的再現性が高いわけではないため、他の評価指標と併用することが望ましいとされています。
FAQ③:採用でMBTIを使うと法律に違反することはある?
回答:
直接的に違法となるわけではありませんが、診断結果が合否に影響する場合、「機微情報の取り扱い」や「差別的判断」と見なされるリスクがあります。必ず事前に目的を説明し、同意を得た上で使用することが重要です。
FAQ④:無料のMBTI診断を採用で使ってもいいの?
回答:
無料のMBTIテストは正確性や再現性に疑問が残るものが多く、企業での採用用途には不向きです。正式なライセンスを持った機関の診断ツールを利用することが、安全で信頼性のある運用に繋がります。
FAQ⑤:MBTIとビッグファイブ、採用に適しているのはどっち?
回答:
採用適性の観点では、ビッグファイブの方が科学的エビデンスに基づいており、職務パフォーマンスとの相関も示されています。MBTIは対話・自己理解・チーム設計向き、ビッグファイブは職務適性の評価に強みがあります。
FAQ⑥:MBTI診断を取り入れた企業の成功例はある?
回答:
はい。たとえばあるIT企業では、MBTIに基づいた配属設計を導入した結果、離職率が約12%改善したという報告があります。成功のカギは、選考だけでなく配属・育成にMBTIを活かす全体設計にあります。
おわりに:MBTIを“選抜の武器”ではなく、“理解と活用のためのツール”として
MBTIを採用基準として用いることには、確かに明確なリスクが伴います。ですが、逆に言えば、適切に設計・運用すれば、個人の特性理解、配属の最適化、チームビルディングにおいて非常に有用なツールとなり得ます。
大切なのは、「タイプで人を分類する」ことではなく、「タイプを手がかりに個性を引き出す」視点です。
結果にとらわれるのではなく、その背景にある対話を重視し、型に当てはめるのではなく、成長の可能性に目を向けるべきです。
「このタイプだから〇〇ができない」と決めつけるのではなく、「このタイプだからこそ、どう活かすか」を考えることで、組織と人材の双方にとって持続可能な成長が実現します。
あなたの会社が目指すべきは、「分類する採用」ではなく、「活かす採用」。
MBTI診断は、単なるスクリーニングツールではなく、人を理解し活かす文化をつくるための“道具”として活用すべきです。
MBTI診断を採用に使う際は、「人を判断する材料」ではなく、「人を理解する手段」として活かすことが、組織の未来を変える第一歩となるでしょう。
参考

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