【要注意】同一労働同一賃金の問題点5選|中小企業が見落としがちな企業デメリットとは
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2026.02.09
2021年2月10日 2026年2月9日

同一労働同一賃金の問題点とは何か|中小企業がまず理解すべき制度の本質
「同一労働同一賃金と聞くが、結局すべて同じ給料にしなければならないのか」
「パートや契約社員にも正社員と同じ待遇が必要なのか」
このような不安を抱える中小企業の経営者や人事担当者は少なくありません。
実際、制度の理解が不十分なまま対応を進めた結果、説明請求や労務トラブルに発展するケースも増えています。
同一労働同一賃金の問題点を正しく把握するためには、まず「この制度が何を求めているのか」という本質を押さえることが欠かせません。
本記事では、同一労働同一賃金への対応に不安を感じている中小企業の経営者・人事担当者に向けて、制度の考え方、企業が直面しやすい問題点、実務上の注意点を分かりやすく整理しています。
同一労働同一賃金の基本的な考え方|「同じ条件=同じ待遇」ではない
同一労働同一賃金とは、「雇用形態が違う」という理由だけで、正社員と非正規雇用労働者の間に不合理な待遇差を設けてはならないという考え方です。
重要なのは、すべての労働者を同一条件・同一賃金にする制度ではないという点です。
厚生労働省は、待遇差の合理性を判断する際、次の要素を重視しています。
これらが同じ、または大きな差がないにもかかわらず、賃金・手当・賞与・福利厚生に差を設ける場合には、合理的な理由が必要とされています。
中小企業が最初に直面する本当の問題点
中小企業が最初に直面しやすい問題点は、「その待遇差が合理的かどうかを、客観的に説明する難しさ」です。
これまで慣習的に行われてきた、
といった運用も、「なぜ違うのか」を説明できなければならない時代に変わっています。

問題点① 人件費が上昇するリスク|同一労働同一賃金が企業経営に与える影響
同一労働同一賃金の問題点として、多くの中小企業が最初に直面するのが人件費の上昇リスクです。
制度の趣旨は理解していても、「実際にどれくらい負担が増えるのか」「経営が成り立つのか」と不安を感じる企業は少なくありません。
実務上、正社員の賃金を非正規雇用労働者に合わせて引き下げる対応は現実的ではありません。
厚生労働省のガイドラインでも、労使の合意なく正社員の待遇を引き下げることは望ましくないと明記されています。
そのため、多くの企業では非正規雇用労働者の待遇を引き上げる方向で調整せざるを得ません。
具体的には、
といった形で、固定的な人件費が増加します。
特に中小企業では、非正規雇用労働者を「コストを抑える人材」として活用してきたケースも多く、この前提が崩れることで人件費構造そのものの見直しが必要になります。
さらに、人件費の見直しは一部で終わらない点にも注意が必要です。
ある職種の待遇を是正すると、他職種とのバランスや正社員間の公平性、既存社員の不満といった新たな課題が生じ、結果的に全体を見直す必要に迫られるケースも少なくありません。
重要なのは、
です。
同一労働同一賃金への対応はコスト増を伴いますが、同時に人材定着や企業の信頼性向上につながる可能性もあります。短期的な負担だけで判断せず、経営戦略の一環として捉える姿勢が中小企業には求められています。
問題点② 人事制度・採用実務への影響|中小企業が直面する現実的な課題
同一労働同一賃金の問題点は、人件費だけにとどまりません。
人事制度や採用実務そのものに影響を及ぼす点も、中小企業にとって大きな課題です。
制度上、賃金・手当・賞与に差を設ける場合には、「なぜ違うのか」を説明できることが求められます。
そのため、正社員と非正規雇用労働者の職務内容や役割の違いを明確にする必要があります。
しかし実際には、
といった状況の企業も多く、これが対応を難しくしています。
また、従来のように業務量に応じて契約社員やパートを柔軟に採用することも難しくなっています。
正社員との待遇バランスを考慮した募集条件が必要になるため、
といった問題が生じやすくなります。
このような状況では、非正規雇用労働者に任せる業務範囲を整理し、正社員との役割分担を明確にすることが不可欠です。
同一労働同一賃金への対応は、人事制度を縛るものではなく、自社の人材活用を見直す機会と捉えることが重要です。
問題点③ 企業間格差が拡大する可能性
同一労働同一賃金は、労働者間の格差是正を目的とした制度です。
一方で、企業間格差を拡大させる可能性があるという問題点も指摘されています。
制度対応には、
といった、一定の資金力と人事リソースが必要です。
そのため、資金や人材に余裕のある企業は対応を進めやすい一方で、中小企業では「最低限の対応にとどまる」「問題が起きてから考える」といった後手の対応になりがちです。
この差は、人材市場にも表れます。
対応が進んでいる企業は「待遇が明確」「働き方が整理されている」と評価され、人材が集まりやすくなります。
反対に、対応が不十分な企業では、不公平感から離職や採用難につながるケースもあります。
結果として、人材が一部の企業に集中し、企業間格差が広がるリスクが生じます。
同一労働同一賃金は、コスト問題だけでなく、企業の競争力に直結する経営課題として捉える必要があります。
問題点④ 説明義務がもたらすトラブルリスク|行政ADRへの発展
同一労働同一賃金において、近年特に重要性が増しているのが説明義務です。
非正規雇用労働者から求められた場合、企業は正社員との待遇差について説明しなければなりません。
注意すべきなのは、「説明すれば足りる」というわけではない点です。
説明が曖昧だったり、合理性に欠けていたりすると、不満は解消されません。
例えば、
といった説明は、合理的理由として認められにくいとされています。
説明に納得できない場合、労務トラブルに発展するケースもあります。
近年は、裁判ではなく行政ADR(裁判外紛争解決手続)を利用するケースも増えており、企業側にとっては想定より早く紛争が表面化するリスクがあります。
一度トラブルが起きると、他の非正規雇用労働者にも波及しやすい点にも注意が必要です。
そのため、説明を求められる前提で準備しておくことが、最大のリスク回避策となります。
問題点⑤ 中小企業にとって実務負担が大きい理由
この実務負担の大きさこそが、同一労働同一賃金が「重要だと分かっていても対応が進まない」と言われる最大の理由です。
中小企業では、「何から手を付ければよいのか分からない」という声も少なくありません。
重要なのは、完璧な制度を一気に作ろうとしないことです。
まず取り組むべきは、雇用形態ごとの待遇整理です。
正社員・契約社員・パートタイム労働者について、
を一覧化し、正社員との差を把握します。
次に、「説明できない待遇差」がないかを確認します。
職務内容や責任に大きな違いがないのに待遇差がある場合は、トラブルに発展するリスクが高くなります。
すべてをすぐに是正する必要はありませんが、「なぜ差があるのかを説明できる状態」を作っておくことが、現実的で重要な第一歩です。
説明義務を見据えた体制づくりのポイント|中小企業が押さえるべき実務対応
同一労働同一賃金では、非正規雇用労働者から説明を求められた場合、企業は必ず応じる義務があります。
このとき重要なのは、「その場しのぎの説明」ではなく、誰が対応しても同じ内容を、同じ根拠で説明できる状態を作っておくことです。
実務上、説明対応でトラブルになりやすい企業には、共通点があります。
それは、待遇差の理由が人によって説明内容が違う、あるいは口頭説明だけで終わっている点です。
説明義務に備えるために、中小企業が最低限取り組むべきポイントは、次の3つです。
職務内容・役割を「比較できる形」で整理する
まず必要なのは、正社員と非正規雇用労働者の職務内容を、並べて比較できる形で整理することです。
完璧な職務記述書を作る必要はありませんが、
といった観点で、違いが分かるようにまとめておくことが重要です。
これが整理されていないと、「実際には同じ仕事をしているのではないか」という指摘に対して、合理的な説明ができません。
賃金・手当の決定理由を文章で説明できるようにする
次に重要なのが、なぜその賃金・手当の差があるのかを文章で説明できる状態にすることです。
「正社員だから」「会社のルールだから」といった説明は、合理的理由として認められにくいとされています。
例えば、
といった要素と結びつけて、待遇差の理由を説明できるように整理しておく必要があります。
この説明文があることで、説明請求があった場合でも、慌てず一貫した対応が可能になります。
社内で「説明の基準」を共有しておく
説明義務への対応は、人事担当者だけの問題ではありません。
現場の管理職が説明を求められるケースも少なくないため、社内で説明の基準を共有しておくことが不可欠です。
といった点を決めておくことで、説明内容のばらつきを防ぐことができます。
厚生労働省も、説明にあたっては「分かりやすく、具体的に」伝えることを求めています。
参考:厚生労働省「同一労働同一賃金 特集ページ」
説明を求められてから慌てて対応するのではなく、「いつ聞かれても説明できる状態」を作っておくことが、最大のトラブル防止策となります。
専門家を活用すべき理由|自社判断だけで進めるリスクを避ける
同一労働同一賃金への対応は、法令・ガイドライン・判例が密接に関係する分野です。
一見問題がないように見える待遇差でも、後から「不合理」と判断されるケースもあります。
特に中小企業では、
といった理由から、自社判断だけで対応を進めること自体がリスクになることも少なくありません。
社会保険労務士などの専門家を活用することで、
といった点を、実務に即した形で進めることができます。
特に中小企業では、トラブルが起きてから対応するよりも、事前に方向性を確認しておく方が、結果的にコストと時間を抑えられるケースがほとんどです。
専門家の視点を取り入れながら進めることで、「対応したつもりだった」という事態を防ぐことができます。
同一労働同一賃金の問題点に関するよくある質問(FAQ)
同一労働同一賃金ですべて同じ給料にする必要がありますか?
→ いいえ。
同一労働同一賃金は「すべて同じ賃金にする制度」ではありません。
職務内容、責任の程度、配置転換や昇進の範囲などに違いがあれば、合理的な待遇差は認められます。
中小企業も同一労働同一賃金への対応は必要ですか?
→ はい。
同一労働同一賃金は企業規模に関係なく適用されるため、中小企業であっても対応は必須です。
パートや契約社員に賞与を支給しないと違法になりますか?
→ 一概に違法とは限りません。
賞与を支給しないこと自体が直ちに違法になるわけではありませんが、
「なぜ支給しないのか」を合理的に説明できない場合は、トラブルにつながるリスクがあります。
同一労働同一賃金の説明を求められた場合、書面で対応する必要がありますか?
→ 法律上、書面対応は義務ではありません。
ただし、後日の認識違いや紛争を防ぐためにも、書面で説明内容を残しておくことが実務上は強く推奨されます。
行政ADRとは何ですか?
→ 裁判を経ずに労働紛争の解決を図る制度です。
比較的手続きが簡易で、労働者の金銭的負担も少ないため、同一労働同一賃金をめぐる紛争でも利用が増えています。

まとめ|同一労働同一賃金の問題点を理解することが企業防衛につながる
同一労働同一賃金は、単なる法改正への対応ではありません。
人件費、人事制度、採用、そして企業としての信頼性にまで影響を及ぼす、中小企業にとって重要な経営課題です。
本記事で見てきたとおり、同一労働同一賃金の問題点は、
- 人件費が段階的に上昇するリスク
- 人事制度や採用実務への影響
- 企業間格差が拡大する可能性
- 説明義務をきっかけとした労務トラブル
- 中小企業にとっての実務負担の大きさ
と、複数の側面にわたって企業経営に関わってきます。
中小企業にとって大切なのは、
です。
「まだ何も指摘されていないから大丈夫」と考えるのではなく、説明を求められる前提で備えておくことが、将来のトラブルを防ぎ、企業を守ることにつながります。
なお、こうした説明体制を整えるにあたっては、評価基準や職務内容の整理といった実務の土台づくりから支援を行っている外部サービスを活用することで、無理なく対応を進められるケースもあります。
同一労働同一賃金への対応を「負担」として捉えるのではなく、自社の人材活用や制度を見直す機会と捉え、段階的に取り組んでいくことが、中小企業にとって現実的な向き合い方といえるでしょう。
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